子宮頸癌、前癌病変について

先日のブログではたくさんの温かいコメントをありがとうございました。

気管切開をするかどうか、尊厳死とはなにか、個人の意志を尊重するべきか、残される家族の思いをどこまで汲み取るのか、、正解はない。。というか、どういう選択をしても、それぞれが正しく、どれもどこかに心が晴れない思いをするのではないかと思っています。

それを分かって、かつ、その覚悟をもって、どういう選択をするかの選択肢を提供するのが医師の役目だと思っています。
その選択肢を提供するにあたって、医療者側の勝手な都合をいれないように気をつけなければなりません。

今回の件では、気管切開に対する知識や経験が医療者に不足しているがために、気管切開はやり過ぎだ、、というバイアスをかけないように、、また、勤務やプライベートの都合で選択を誘導させないように、、純粋にご本人、ご家族にとって最善の方法はなにか、医療者が独りよがりにならないように、本人も、家族もスタッフも交えて方向性を決めれるようにしていくことが肝要かと考えます。

さて、うちは在宅医療だけでなく、外来もしております。

今回はがんのご相談をいただきました。

まだ30歳代とお若いのですが、子宮がん検診で異常を指摘され、細胞診の結果、がんにはなっていないけれど、前癌病変だった。。というものでした。

この前癌病変を経て、子宮頸癌になるといわれており、この原因がHPVというウイルスで、ワクチンが存在します。

副作用の問題があり、ワクチンを打つ、打たないでまだ結論は出ていない状況であり、それについてもわたしなりの意見はありますが、今回はワクチンの是非の話ではないので、さておきます。

わたしはもともと消化器外科なので、子宮がんについては専門外なのですが、わたしの母もおなじ経過をとり、手術をしたということもあり、いささか勉強しましたし、がんという病態についてはどのがんも基本的に同じだと考えております。

前癌病変の状態でみつかったのは、本当にラッキーだったと思います。しかし、検査をしたのはほんの一部分です。前癌病変全体をとってみて、本当に癌になっている部位はないか確認しなくてはなりません。しかし、この段階で子宮を全部とるのは、まだお若く、妊娠の可能性も否定出来ないことから、すこしやり過ぎ、、ということになります。

そのため、円錐切除という部分切除を行い、本当に癌になっていないか、前癌病変がすべてとりきれたかを顕微鏡で検査することになります。

癌になっている部分があり、切除が不完全であれば、子宮の摘出になりますし、癌になっている部分がなく、前癌病変もとりきれていれば、それで完了ということになります。(もちろん、残った子宮のフォローは必要ですが。。)

ここで問題です。

早期胃癌で手術はうまくいって、根治したはずなのに、数年後に再発してしまったということが現実的に起こっています。

円錐切除し、顕微鏡的にとりきれたとしても、本当に大丈夫か。。そう思っても不思議ではありませんし、専門医でたくさんの患者さんを診ているお医者さん程、それを心配します。
統計上、早期癌で根治切除できれば、再発する可能性は低い..とはいえ、100%ではないからです。

今回の患者さんはそのことを心配しておられました。

まず、円錐切除の前に、なにかやることはないだろうか。。

たしかに、前癌病変に対して、この段階でワクチンを打つことで、前癌病変のステージが進まなかったり、逆にステージが改善したりします。また、いまの段階で高濃度ビタミンCなどで抗腫瘍効果をねらった方がいいのでは、、と思っておられました。

わたしはそれは賛成しませんでした。

できれば円錐切除もしたくない。。と考えておられれば別ですが、できれば憂いを残したくないので、最初から子宮全摘出でもいいと思っておられましたので、ワクチンや高濃度ビタミンCを使うと、たしかに前癌病変は改善するかもしれません。しかし、それが見せかけだけで、本質は改善していなければ、あとで後悔しかねません。

わたしの提案は、円錐切除まではなにもせず、円錐切除をした段階で、CTC検査(循環血中腫瘍検査)をうけ、血中の腫瘍細胞の数と円錐切除の病理結果をもって、全摘をするか、円錐切除のままで、高濃度ビタミンCなどを追加するか検討したほうがいいのではないか、、ということにしました。

早期癌で手術はうまくいったけど、なぜか数年後再発しちゃった。。というのを科学的に予防したいと思っています。

CTC検査は医療保険の適応となる検査ではなく、高価ですが、やる価値はあると思っています。

なにはともあれ、来週の円錐切除、うまくいくことを祈っています。
また、とびきりの笑顔を待っています。